雑感だけでも

先に書きましょう。


コンサート自体はどっからアンコールなのかよくわからなかったんですが取り合えず4曲やりました。
ですが1番初めの曲の
Mozart Piano Sonate C-dur K.330 
までだけ書こうと思います。まぁ完全に個人的な感想なのですが。


Zimerman氏はピアノの前に座るなりすぐさま弾き始めました。
まったくといっていいほど響かない(当たり前ですが)安田講堂で急に始まった音楽は、一瞬どこか遠くから聞こえてくるような、そんな感覚を受けるほどでした。快活でさわやかともいえる長調の響きなのですが、Zimerman氏は明るくもどこか淡々と弾いていきます。ピアノの音色自体は非常に優しくやわらかい印象を持ったのですが、どこか突き放したような演奏が続きます。やがて第2楽章に入り、予期せぬ短調の響きが聴こえてきます。遠くから響いてくるように聴こえていたはずなのに、いや、おそらくそれだから逆に運命のように感じられたのですが、急に胸を打つような緊張感の中に放り込まれたような感覚に陥りました。すぐにいとおしむようなメロディーにすくい上げられても一度感じた暗さは消えません。揺さぶられるように聴いていて第3楽章に入ると、なぜか、自分でもとても驚いたのですが、急に長調の響きが信じられなくなりました。空々しくて、そう、空虚で、乾いていて、絶望的にしか感じなくなりました。どんなに明るくて透明なメロディーも嘘にしか聴こえない、そうなぜか信じ込んでしまって、空っぽのところに響くメロディーをただぼーっと聴いていたのですが、そこで突然、そういった空々しい嘘みたいな響きだからこそ、信じられないからこそたまらなくいとおしい響きのような気がしてきたんです。それに気づいた時はもう第3楽章も終わりのころでした。なんだか幸せというと違う気がするのですがなにかそういう気持ちになって最後のフレーズを聴き、気づくとめいっぱい拍手をしていました。
泣きそうになってたのは秘密ですが。
しかし今思い返すとZimerman氏はこういったイメージで弾くためにはじめから少し突き放したような弾き方をしたのかなと思ってしまいます(ほぼ自分の勘違いでしょうが)。しかし忘れがたい音楽体験だった気がします。


夜中の文章なのできっと朝読み返したら微妙で非公開にする気もしないでもないですね。